音楽に寄せて 

街のピアノ講師が日々思っていることを綴ります

セピア色の音楽~ブラームス『6つのピアノ小品 作品118』より第2曲「間奏曲」

 

動画をアップしました。

今回はブラームスの『6つのピアノ小品 作品118』の第2曲”間奏曲”です。

 

この曲は、プロ、アマ問わず愛奏されることが多く、

ブラームスのピアノ作品の中で最もよく知られ、愛されている1曲です。

ブラームス最晩年の作品のひとつで、作品118はあのクララ・シューマンに献呈されています。

 

この第2曲は、ブラームスの、クララへの想いが最も込められており、

9月13日にアップしたのは、クララの誕生日だから^^

まだユーロになる前のドイツ100マルク紙幣(本物)です。子どものときの頂き物。

ピアノのそばに飾っています。

 

 

この作品、かなり人気なようで、ネットで調べると

関連するブログや解説動画が結構たくさん出てきて。

中にはなかなかマニアック(?)なものもあり、面白かったし勉強になりました。

それだけ魅力があるということですね。

 

小難しい楽曲解説はそちらの方をご覧頂くとして、

今回は私のこの曲への思いというか解釈を書きたいと思います。

 

 

この作品は向き合うたびに新しい発見があり、楽譜を読み込めば読み込むほど理解が深まり、またブラームスのクララへの想いが伝わってきて、本当に素敵な作品だなと感じます。

それに、自分で弾いていても涙が出るほど感動する。。。

聴いて素晴しい名曲は、弾くことにより、よりその素晴らしさが分かるんだなぁ。

 

楽譜には「Andante teneramente」と速度表記があります。

Andanteは「歩くような速さで」teneramenteは「愛をもって」という意味です。

もう冒頭から大切に弾きたくなります。

最初のこの部分が↓テーマ。

Cis H D~は、作品中内声にも何度も登場。

これを埋もらせずにちゃんと歌わせたいと毎回思っているし大事にしていることです。

 

 

 

この曲の全部が好きですが、特にこの部分からのが私はすごくすごく好きで。。

旋律がGis A Fis~のところ

 

ここ、前半と後半に丸々同じ形で2回出てくるのですが、

私の中では1回目と2回目、込められている想いが微妙に違うと感じています。

 

1回目は、ブラームスのクララへの「せつない想い」。

なんとも胸が締め付けられるようなせつなさ、寂しさを感じます。

過去を回想するような中間部をはさんで、

2回目は、そのせつなさを少し残しつつも、

クララへのあたたかい、感謝の気持ちがあるのでは?と思っています。

 

「あなたと出会って良かった。あなたを好きになって良かった。ありがとう」

そんな深い感謝の想いが感じられるのです。

 

本当のところは全くわかりませんが、2回目の部分は

「そうだったらいいな」と思っていつも弾いています。

 

ブラームスのクララへの想いは、出会った頃のような恋心がずっとあったわけではなく、おそらく友情や尊敬の気持ちへと変化していったでしょう。

楽家としても1人の人間としてもお互いに尊重し合っていた、そんな関係だったはずです。

 

 

 

ブラームスのとても個人的な思いが、ピアノという楽器を通して語られている曲であり、ブラームスの心の独白だと感じているので、

あくまで私の場合ですが、安易な気持ちではなかなか弾けないのです。

ブラームスがそれまで生きてきた人生の中で感じてきたであろう様々な思いが凝縮されているようにも感じます。

また、この曲がこれだけ多くの人に愛されているのは、

生きていく中で誰もが一度は経験し感じたことがあるであろう、

(言葉では言い表せない)思いを、聴く人がブラームスに重ねているからではないか、とも思っています。

それは聴く人によってまさに様々でしょう。

 

 

 

 

 

ブラームスのとても大切な思い出のアルバムを覗いているような、

そんな気持ちになります。

その音楽はまるで、セピア色。

ブラームスが抱えてきた孤独や痛み、心の叫びだけでなく、

思いやりとあたたかさにあふれた曲です。

 

 

 

 

始めてこの曲を弾いた20代の頃より、数年前に久しぶりに弾いた時、そして今回と、

そのたびに新たな発見があり、弾く度に理解が深まっているように思います。

一つの作品と深く向き合うこと、作曲家と向き合うこと、楽譜と向き合うこと。

演奏とは答えのない、尽きることのないものだということ。

こうしたことの大切さを、この作品から学んだように思います。

 

 

 

 

 

どこまでも魅力が尽きなく、何度聴いても弾いても感動的で、

私にとってはこの先もずっとずっと大切に弾き続けたい、

そんな1曲です。

自分にとってとても大切な誰かを思うときに弾きたくなる曲でもあります。

 

 

 

 

 

この第2曲以外にも、作品118全曲が素晴しいので、

ぜひぜひ他の5曲も聴いてみてください。

また、ブラームスの最晩年の作品群は他にも素晴しい曲ばかりなので、

そちらの方もぜひ!

例:Op.116,Op.117,Op,119など

 

 

技術的にも音楽的にも今よりももっと研鑽を積み、また人生経験を重ねて、

この第2曲だけでなく作品118を自分が納得いく演奏ができるようにしたいと思っています。

 

 

 

 

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