音楽に寄せて 

街のピアノ講師が日々思っていることを綴ります

届ける

私がレッスンを受けている中で、よく言われることがあります。

それは、

「音を遠くに飛ばす意識を持って弾きなさい」ということ。

 

ピアノを弾く上で、どんな心がけ、意識を持つかということは非常に大切なことです。

ちょっとした心の持ちよう、意識の違いで演奏ががらりと変わるからです。

 

 

あるとき、この「音を遠くに飛ばす意識を持って弾く」ということは、

聴いている人に届く音、伝わる音で弾く、ということではないか?と思いました。

 

 

演奏は、聴いてくれる人がいるからこそ成り立つものです。

その人に、届く音、伝わる音で弾く。届けよう、伝えようという意識で弾く。

 

とても大切なことです。

 

自分なりにそのことに気がついてから、ではどういうからだの使い方、状態なら「届く音」で弾けるのか、試行錯誤するようになりました。

今も出来ているかはわかりません。

出来ているときもあれば、出来ていないときもある、という感じです。

 

すべての音を、そのような音で弾けるようになるには、まだ少し時間がかかるでしょう。

それでも諦めたくないから、「まずは一音でも」と、これからも試行錯誤し続けます。

 

 

同時に、ピアノを弾くということは、常に自分の内面と向き合うことだとも思っています。

 

何かを伝える、聴く人に届ける、ということはそういうことではないでしょうか。

 

自分が感じていること、作品に対しての思いなど、伝えたいこと、届けたいことは人それぞれだとしても、まずは自分はどうなのか?を自分でわかっていないと、伝えようにも、届けようにも伝わらないし、届けることはできません。

 

 

単に弾けるようになることや技術を追い求めているだけでは、聴く人の心に届く演奏はできないでしょう。

 

人は、自分の思いを何かしら伝えたいものです。

それは、自分という人間の存在を表現したい、ということ。

その手段が、人によって絵だったり、文章や文字だったり、そして音楽だったりするのです。

私にとっては、ピアノなのです。

演奏家ではないけど、そうなのです。

 

 

聴いてくれる人の存在に感謝し、その人に届く音で弾けるよう日々試行錯誤しながら、これからも精進し続けたいです。

たった1人でも聴いてくれる人がいるなら。