音楽に寄せて 

街のピアノ講師が日々思っていることを綴ります

等身大

あるピアノの先生の曲目解説動画で、作曲家の言葉を紹介しているものがありました。

それは、ロマン派の作曲家シューマンの言葉で、

 

「易しい曲を上手に綺麗に弾くように努力すること。そのほうが難しい曲を平坦に弾くよりましだ」

 

というもの。

 

その先生も、「今の自分のレベルの手の内にあるものを選び、奥深くまで楽譜を読み込んで、表現するということを可能な限りどこまでも追求した演奏は、技術的なレベルなんて関係ないと思うほど感動的なものになります。そして演奏者自身の音楽的理解が深まるとともに、表現するということが身についてきます。」とおっしゃっていました。

 

また、「もちろん、技術をつけるための訓練や、時には少し背伸びして必至に楽譜に食らいついていく経験も必要だとは思いますが、それだけでは音楽性は備わりません。」ともおっしゃっていました。

 

まったく同感です。

 

いつもいつも自分の実力以上の曲ばかり弾いていては、「弾くこと」に一生懸命になり、音色についてや表現、音楽の流れなど、大事なことがおろそかになってしまいがちです。

 

これは私自身の経験から言っているところでもあります。

 

自分自身を見つめ、知り、今の自分はどんな曲が弾けるだろう?と立ち止まって考える時間を持つことは大事なことです。

 

 

大人初心者の方の多くは、大人になって初めてピアノを習っているので、経験者よりも壁にぶつかること、指が思うように動かないこと、譜読みのことなど、きっと多くの悩みがあると思います。

しかし、そうした大人初心の方は、最終的に弾きたい曲はそれなりに高いレベルのものを掲げていながらも、背伸びし過ぎず、今の等身大の自分を受け容れながらご自分の力であれこれ試行錯誤してピアノと向き合っている人が多いと私は感じています。

 

長い目で自分を見ている。

 

ひとつの理想的なピアノとの向き合い方をしていると思います。

大人初心者の方の強みだと思うので、どうぞそこに自信を持ってこれからもピアノを弾いていっていただきたいですね。

 

少し話が逸れましたが、今の等身大の自分が弾ける曲と全力で向き合う、取り組んでみる経験を、ぜひ1度はしてほしいです。

 

その曲が、自分で思っているよりもずっと易しい曲だったとしても、楽譜と向き合うことの大切さ、一音一音音を聴きながら弾くことの大切さなど、多くのことが学べるはずです。

そしてその曲と全力で向き合った後は、一回り成長した自分に出会える可能性は高いでしょう。

 

 

音数(おとかず)が少ない曲って、ごまかしが利かない分、美しく弾くのは案外難しいものです。

ピアノ学習者なら誰もが1度は通る『ブルグミュラー25の練習曲』だって、本当に美しく弾こうとしたらそう容易ではないんですよ~。

 

 

この記事を読まれた人はぜひ、今の自分はどんな曲がふさわしいだろう?と考えてみてください。

それではまた。Viel Spaß!