音楽に寄せて 

街のピアノ講師が日々思っていることを綴ります

巨匠は自由~《ミハイル・プレトニョフ ピアノリサイタル 2023》

発表会と日にちは前後しますが、念願のミハイル・プレトニョフの演奏を聴いて来ました!

 

ミハイル・プレトニョフといえば、現代最高のピアニストの1人。

その演奏を聴いた人から以前、「世界観が違う」と聞いていて、もうこれはいつか聴いてみたい!と思い、今回ようやく!

 

プログラムです↓

スクリャービンショパン前奏曲をそれぞれ全曲。

スクリャービン前奏曲を全曲って、なかなかない機会です。

 

アンコールはこちら↓

ショパン前奏曲 Op.45嬰ハ短調

ショパン夜想曲 Op.9-2変ホ長調

 

今回はいつもに増してざっくりした感想ですが、ひと言で言うと、

自由な演奏でした。

 

「えっ?そんなん有り?」というくらい自由!

でも、曲の本質、音楽の本質をちゃんと音で表現しているから、自由でありながらも聴くものに説得力のある演奏なのです。

巨匠だと、あそこまで自由でも有りなんだなぁ、いいなぁ、と羨ましく思ったり(笑)

 

 

素晴しかったのが、出だしのたった一音でその世界に引き込まれてしまったこと。

すごいです。

それに、一切の力みのない音。

からだの支えるべきところは支えて、それ以外は完全にリラックスした状態で弾いているから、あんなにも力みのない響きが空間全体に広がって、だから聴衆に届くんだ。

 

 

私には、プレトニョフが私たち聴衆と音楽を共有しようとしているように感じました。

「こんなにも素晴しい芸術作品を、共に共有しようじゃないか」

そんなふうに感じたのです。

 

完璧なテクニックを持ち、本質を捉え、知性も備えているからこそ、あんなにも自由な演奏が可能なのです。

 

まるで水彩画を観ているかのような音色だったり、鐘の音のような音だったり、どこまでも変幻自在。

あんなふうにピアノを自由に扱えたら、どんなにか楽しいだろう!

 

アンコールのノクターン2番はですね、まるでジャズのようでした(笑)

ちょっと作ってしまっているところもあり、学生がああいう演奏を試験やコンクールなどでしたら、きっとダメでしょう(笑)

でも、素敵でした♪

 

 

今回も3階席で、演奏している様子が見えやすい、とは言いがたい位置だったのですが、そんな中でもプレトニョフの演奏を見ていて気がついたことがあります。

それは、私がレッスンを受けている中で以前から言われていたことです。

この場で書いて良いのかわからないので書けなくて申し訳ないのですが、

「からだのある部分を支えにして弾きなさい」と再三言われていました。

それは、従来の弾き方ではおそらく言われないことです。

その感覚がなかなか掴めなくて、早数年。。

 

プレトニョフは、まさにそれを体現していました。

「先生が言っていることはこういうことなんだ」と気がついたのです。

だから、音があんなにも豊かに響いていく。客席に届く。

 

発表会までに出来るとは思っていないけど、プレトニョフを聴いた次の日から早速、試してみることに。

今も当然、完全に出来ているわけではないけど、少し感覚を掴めてきました。

 

言われたことがすぐにできなくても、理解できなくても、何年か経ってできること、理解できることって、あるんですよね。

 

 

余談ですが、隣に座っていたおじさんが何故かいきなり話しかけてきて、専門の方なのか、相当いろいろなピアニストを聴いているようでした。

プレトニョフのデビュー間もない頃の演奏も聴いているようで、開演前や休憩時間、終演後も、お互いに感想を話合って。

私がここ最近聴いたピアニストの名前をあげたら、好きなピアニズムが分かったようで、「それじゃ来月○○さんも聴くんですか?」と聞かれて。。

当たりです(笑)すごいですね!

オススメのピアニストも教えて頂き、発表会終わったら聴きます!(ありがとうございます!)

楽しいひとときでした(笑)

 

 

 

プレトニョフの音は、まさに芸術の音でした。

それは、人の思いが感じられる音。血の通った音。まさに音楽的な音。

 

私は、こういう音で弾きたい。

これから先ずっと、目指し続けたい音です。

 

忘れられない演奏のひとつとなりました。感謝。