生徒から「ピアノが上手になるためにはどうしたらいいですか?」と質問を受けたときのこと。
なんでも、学校からの宿題で職業インタビューをするんだとか。
ピアノの先生って一般職と違いちょっと珍しいからか、興味を持ってくれたみたいです。
で、私は先の質問に対しこう答えました。
「ピアノ以外のことに興味を持って世界を広げることだよ」と。
このときの生徒さんの「えっ??ナニソレ???」という感じでびっくりしたような表情が印象的でした(笑)
予想外の答えだったみたいです。そりゃそうだよね(^0^;)
でも本当にそうなんですよね。
毎日ピアノに向かって弾いていれば上手になるかというと、どっこいそうでもないんです。
指が強くなれば~、とか、リズム練習とか、どうしても指重視な場合が多いようですが、そうじゃないんです。
あと、奏法を変えれば、というのも(汗)。。。
私は奏法を変えたおかげで格段に弾きやすくなったので、こんなこと書くのも変な話なんですけどね。。
私の場合は、今の奏法が自分に合っていた、というのがあります。
それは練習方法とかも含めてです。
何より私自身の音楽的価値観とピッタリなんです。
ずっと探し求めていたもの、という感じです。
だから、あくまで私にとっては「本物だ」というだけです。
そもそも、奏法を変えるとは、耳を変えるということ。
ただ弾き方を変えればいいわけじゃあないんです。
音の聴き方、音に対する感性を変えていくこと、だと思います。
奏法を変えたことによって、今まで見えていたピアノの世界がガラリと変わって、それがピアノを弾く楽しさにつながって、今はそれまでのピアノ人生の中で一番楽しいんですが、同時に、「ピアノを弾くということとは?」「音楽とは、芸術とは何か?」ということを今までよりも深く考えるようになりました。
考えずにはいられなくなったという感じです。
そんな中で思うのは、ピアノが上手になるためには、ただ指が強くなればいいわけでもなく、奏法を変えればいいわけでもなく、
自分で自分を育てていくことが一番大事なんじゃないかと思うようになりました。
どんなに指が強くなってよく動くようになっても、弾く人自身の感性が育っていなければ、心動かされるような素敵な演奏にはほど遠いでしょう。
奏法を変えれば、あるところまではいけるとは思うけど、それもやはりその人次第のところはあると思います。
特に音色に関しては、弾く人の感性にかかっています。
留学時代、明らかに自分よりも「(単に「弾く」という意味での)テクニック」はずっと上なのに、なんとも味気なく「音楽がない」演奏を聴いたことがあります。
譜読みはすごく早いし、指はよく動くから難曲も弾きこなしてしまうのに、です。
その人自身も自分でわかっていたようで、自分で「ワタシの問題は音楽性なの」と言っていました。
きっとその人は、子どもの時からそれまで、「弾くこと」ばかりの訓練を受けて来たのでしょう。
指がよく動くように、速く楽譜が読めるように、ミスなく弾けるように
もしその人が、音をよく聴くことや自分の頭で考えたり感じたりしながらピアノと向き合っていたら、きっと素晴しい演奏を聴かせてもらえたと思います。
ただその人は自分の音楽性に問題があると気づいていながらも、感性を磨く努力をしなかった。
その後はどうされたのかわかりません。
大事なことは、その人自身が、能動的に自分を育てていくことです。
具体的に言うと、先述したように耳を変えること、音に対する感性を育てることが最重要かと。
そのためには、ピアに向かう以外の時間がとても大切になってきます。
ピアノ以外の楽器や声楽作品などを聴くこと、できるだけたくさん(自分よりも上手い)他の人の演奏を(可能なかぎり生で)聴くこと、本を読むこと、自然に触れること、音楽以外の芸術にも触れること
まだ他にもありますね。
私は、普段の生活の中や、他の人が見逃してしまいそうな些細なことに感動できることが大切だなと思っています。
それは毎日の何気ない景色だったり、ふと目にしたり耳にした他人の言動だったり。
こうしたことの積み重ねが、あなたの音楽を育てていくのです。
だから、ピアノに向かう以外の時間も大切に。
むしろそちらの方が大事です。
弾く人の耳と心と頭とからだがひとつになって、ようやくなんです。
つまりは感性もテクニック、なのだと思います。
イマジネーション、想像力とも言えます。
指が動くようになるだけでは、ピアノは本当には上手になりません。
奏法を変えることも同じです。
最終的にはあなた次第。
あなたが自分で自分をどこまで育てていけるかに、かかっているのだと思います。