音楽に寄せて 

街のピアノ講師が日々思っていることを綴ります

易しい曲

こんにちは。

 

 

地元の市内の小学校はいま、運動会シーズンです。

先日、母校から練習のようすが聞こえてきて、

サン・サンサーンスの「白鳥」の音楽が・・

いったい、「白鳥」でどんな演技をするんだろう??と興味津々です。

 

この時期の紫外線は気をつけないとですね。

小学生の時、応援に夢中になっていて気がついたら真っ赤になっていた!

ということを思い出します。

 

 

 

 

さて、前回からまた空いてしまいました。。

junkopiano.hateblo.jp

 

 

ピアノは、楽譜に書かれている音符の数が多いので、

どうしても「弾くこと」に意識が行きがちです。

でも、少しずつでも音の質を大切にした演奏ができるようになったら、

嬉しいですよね。

 

そのために、どのような曲を使った練習が良いか?

 

私が個人的にオススメするのは、易しい曲です!

「易しい曲」をレッスンの中で使うことは非常に有効です。

これは、専門的にやっている人、趣味、子どもも大人も関係なく、

どのような人にも有効です。

 

 

ではここでいう「易しい曲」とは、

  • 音符の数と種類が少ない(主に二分音符、四分音符、八分音符が出てくる曲が良いでしょう。十六分音符は少なめ)
  • リズムは非常に簡素
  • 曲も短い(4~8小節くらい)

 

これらの条件を備えた曲のことを言っています。

 

 

これ、お気づきでしょうか。

いわゆる導入期の子ども用の教本におさめられている曲のほとんどと同じです。

 

 

私は、現在師事している先生のところに入門して最初の数年間は、

こういった子ども用の導入期の教本でレッスンを受けていました。

「聴くこと」を重点に、一音一音注意深く聴いていきます。

 

それまでと違う耳の使い方なことと、

長年弾き続けていた癖がどうしても出てしまい(今でもときどき)、

たった一音でも「本当に美しい音」がなかなか出せず、四苦八苦しながらでしたが・・

私の場合はゼロからのやり直しでしたし、それまでの弾き方、音の聴き方が染みついた状態だったので、時間がかかったのだと思います。

 

 

 

ここで、いくつか教本をご紹介します。

※今回は、「聴くこと」を重点に、どのような教本がおすすめか?

という視点で書いているので、それぞれの教本の詳細については省略します。

 

まずこちら

村手静子先生訳の『ロシア奏法によるピアノ教本 はじめの一歩』(音楽之友社

 

前述の、現在師事している先生のレッスンで使っていました。

私はこの2巻を少しと、3巻をしっかり時間をかけて取り組みました。

この表紙に書かれているロシア語(1巻なら水色の文字)は、

「歓びをもって音楽を」という意味だそうです。

素敵ですね^^

 

 

 

次にこちら

『Die Russische Klavierschule』

これは、ドイツで出版されているロシアメソッドの教本です。

私はアマゾンで購入しました。

 

 

使うとしたらBand1がやはり良いでしょう。

この本(Band1)の序文に、とても大事なことが書かれているので紹介したかったのですが、その序文についてはまた別記事で書きます。(長くなるので)

Band2とBand3は曲集のようになっていて、さまざまな時代様式の曲が収まっています。

また、Band1も後半は音数の多いものが増えてきます。

 

 

『はじめの一歩』と『Die Russische Klavierschule』は、

ピアノの先生たちの間でもここ何年かで使う人が増えてきていますね。

 

 

 

最後はこちら

Elena Gnesinaの『THE PIANO ABC』

(ヘンレ版のBeetthovenの楽譜は、大きさが伝わりやすいと思って一緒に撮りました)

 

これは、日本では一般には流通していません。

海外のサイトから直接購入する、という手段もありますが、

私はなんだかコワくて(汗)、、

「カマクラムジカ」さんという輸入楽譜専門のお店にお願いして取り寄せてもらいました。

 

このカマクラムジカさん

輸入楽譜・クラシック楽譜・スコアの専門店|カマクラムジカ (kamakura-musica.com)

 

この『The Piano ABC』を含めてまだ2回しかお世話になっていないのですが、

2回ともとても迅速、丁寧な対応に感動しました。

『The Piano ABC』は、カマクラムジカさんでは取り扱っていなかったんですが、

「HPに載っていないものでもお問い合わせください」とあったので、

ダメもとでメールで問い合わせしたところ、、、

すぐに返信が来て「取り寄せ可能です」と!

対応の早さに驚きました。しかも感じもすごく良い!

注文して3週間ほどで来ました。

送料込みで1冊2600円ほどだったと思います。

カマクラムジカさん、今新たに欲しい楽譜がいくつかあるので

またお世話になると思います。

 

 

 

『The Piano ABC』の中身を少しだけお見せします。

 

 

この『The Piano ABC』、極薄い中に50曲入っています。

私は現在レッスンで生徒さんに実際に使っています。

こうした音の数が少ない短い曲を、

メインの曲の前に、10分くらいかけて(時に15分くらい)、

一音一音聴きながら弾いていきます。

1レッスンで1曲か2曲です。

 

ピアノは、1曲に何ページもあるのが普通ですから、

できるだけ音の数が少ない曲、短い曲で「聴くこと」に慣れる必要があるのです。

 

すぐには結果は見えません。

その生徒さんの音に対する感性や、ピアノに対する欲求の度合いにもよります。

ですから人によって、数ヶ月から数年かかるのです。

 

でも、少しずつでも音の質に対する意識を高めていくと、

それまでそうしたことに無頓着だった子でも、

少しずつ変化していきます。

それは、その子の耳や、音に対する意識が変化がしてきたからでしょう。

もちろん、こちらがどんなに働きかけても、芽が出ない場合もあります。

 

 

レッスンの始め、メインの曲の前にこうした易しい曲を、

「聴くこと」に集中して弾き、その耳の使い方と意識のまま次にメインの曲に入る。

 

こうした流れでレッスンを行っています。

良い耳の使い方と、手の内側の筋肉やからだの状態を意識しながら弾くことにより、

「良い音」で弾けるようになっていきます。

そして、耳を使いながら弾いていくことにより、手もピアノを弾くために必要なものに育っていきます。

 

 

ご紹介したロシアメソッドの教本は、

どれも「弾くこと」よりも「聴くこと」に重点が置かれているという点があります。

また、両手でひとつの旋律をつくる曲がわりと多く入っている印象です。

これは、呼吸の仕方を学ぶのにもとても良いと感じています。

 

 

 

 

 

さて、今回はロシアメソッドの教本を紹介しましたが、

日本の導入期の教本も、使い方や選曲次第で同じように使えると考えています。

 

 

また、これら導入期の教本を一通り終えたら(他のテキストと併用しながらでも)

次に個人的にオススメなのが、

『プレ・インヴェンション』(全音楽譜出版社)です。

 

定番の教本なので私が紹介するまでもないかな、と思いますが、

これは、J.S.Bachの『インヴェンション』の前の導入書です。

バロックロココ時代の曲が入っており、耳馴染みが良く、適度に短い曲が多いですし、なんといってもポリフォニーが学べるのでオススメです!

 

『プレ・インヴェンション』でも『バッハ インヴェンション』でも、

ポリフォニーを学んでおくのは、たとえ趣味でも大切ではないかと考えています。

 

J.S.Bachは後世の作曲家たちに多大な影響を与えました。

ショパンなど、ロマン派以降の作品を理解し演奏するには、

ポリフォニーを学んでおくことはとても大切です。

 

でも、いきなりBachの『インヴェンション』だと難易度が高すぎる。。

なので『プレ・インヴェンション』です。

 

私はある時いきなり『インヴェンション』に進んでしまい、

まだ子どもだったのでBachの良さがわからず、

「ムズい・・よくわからない、ヤダコレ・・」と思いながら弾いてたっけ。。

Bachの良さがわかるようになったのは大学を卒業してからなので、

もし『プレ・インヴェンション』から入っていたら何かが違っていたかも?

なんて今でも思います。

 

 

バロック時代の音楽に親しむにも

『プレ・インヴェンション』は良い教本だと思います。

 

最近はこの『プレ・インヴェンション』以外にも、

『バッハ インヴェンション』への導入書がいろいろあるようなので、

ポリフォニーを楽しく学べるなら、そういった教本を使うのも良いですね。

 

 

 

「まずは一音から」。

そこから少しずつ「聴くこと」に慣れていきましょう。

 

そして「一音でも美しい音で」。

そんな気持ちでピアノに向かってください。

欲張らず、焦らず一歩一歩進んで行けば、

憧れのあの曲を美しい音で弾くことは、決して夢だけでは終わらないと思います。

 

私もそんな感じで進んできましたし、今も現在進行形、発展途上中です。

諦めなければ必ず上達します!

 

 

 

Viel Glueck!