音楽に寄せて 

街のピアノ講師が日々思っていることを綴ります

対話する

 

昔の私は、ピアノを頑張って一生懸命弾いていました。

 

鍵盤の下までしっかりと。

 

そうでないと、弾いた気がしなかったし、

しっかり弾くと、「ちゃんと弾いている」気がしたから。

 

 

大学の試験前なんかは、何時間も練習していました。

2,3日弾かないと、もうそわそわ。。

練習していないと罪悪感があったり。

 

 

 

不安だったんだと思います。

 

 

でも、そうやって「頑張って」「一生懸命」弾けば弾くほど、

ピアノとの距離が遠くなっていたように思います。

 

 

いまは、奏法を変え、耳の使い方が変わってきたおかげで、

ずいぶん楽に弾けるようになりました。

 

この「楽に」というのは、

身体的にも、精神的にもという意味です。

 

 

指がとてもとても弱かったので、

「一生懸命」弾かないと、音にならなかったのですが、

弾いているときの自分の身体の状態を意識するようになり、

また、とにかく響きを聴くことを集中するようになり、他にもありますが、

それらを少しずつ積み重ねていった結果、

 

ピアノと対話するように、

楽器と自分の身体がまるで一体になったかのような感覚で弾けるようになってきました。

 

 

そして、一生懸命頑張って弾いていた頃は

音が硬くて伸びなくて、和音も豊かではなかったのですが、

 

響きを含んだ柔らかい音、伸びのある音、

和音も、昔と比べたら豊かに響かせるようになってきたと思います。

 

 

 

私は、ピアノという楽器を知らなかったのだと思います。

 

全くわかっていなかった、理解していなかった。

 

だから、あんなに、一生懸命に弾いていたのです。

 

 

 

ピアノは、弾き方次第、扱い方次第で、

どこまでも美しい音が奏でられる。

 

 

ピアノと出会って長いですが、ここ数年でやっと、

ピアノを理解できつつあるのだと思います。

 

 

 

もう昔の弾き方には到底戻れません。戻りたくないです(笑)

 

それまで自分が知らなかった、もっと素晴しい世界を知ってしまったから。

 

どこまでも豊かで、深淵で、無限に広がっている世界です。

 

 

 

これからも、学び続けて、もっとピアノへの理解を深めて、

一音一音を大事に、ピアノと対話しながら弾き続けていきたいです。