プレトニョフのピアノによる、ラフマニノフピアノ協奏曲全曲演奏会の第1夜に行ってきました。
ピアノはShigeru Kawai
プレトニョフの演奏は2月のソロリサイタル以来、今回で2度目。
その時は「巨匠は自由~」というタイトルで書かせていただきましたが、、
今回プレトニョフのピアノを聴いて思ったことは、タイトル通りですが、
「余裕のある演奏だ」ということ。
技巧的なところ、難しいパッセージを、なんてことなくとても自然に弾いている。
これ↑、とんでもなくめちゃくちゃ上手い!ってことですから!!
若いピアニストたちが一生懸命、時にはピアノにしがみつくように弾くところを、
ごくごく自然に、かつ美しく弾いているのです。
ピアノに限らずですが、難しいことを難しくないように見せる、聴かせるのって、
それだけの技術がある、持っているということです。
ザ・巧みの技。
私は思いました。
「そうかぁ、巨匠にもなると自由なだけでなく余裕なんだなぁ」と。
余裕があるから、あれだけ自由にもなれるんでしょうね。
プレトニョフは、あれだけの高い技術を持っていながら、決してひけらかした演奏をしません。
確固たる技術があるからこそ、そんな必要はないことを当然知っているのかもしれません。どこまでも自然体。
だから余裕がある。自由な演奏も可能。そして芸術的な音。
音が生きているんです。生命力のある音。
音色に関しては言わずもがな、多彩で、響きを操るのがやはり巧み。
毎度毎度ざっくりな感想で申し訳ないですが、
決して独りよがりの独奏ではなく、オケと響きが溶け合って(協奏曲なのだから当然と言えば当然ですが)、オケと一緒に、一体になって音楽を創っている。
プレトニョフがピアノソロで主役ではあるけど、主役感が良い意味であんまりなかったです。(個人の感想です)
私は協奏曲を聴くとき、そういう演奏の方が好きなので、そういう意味でも素晴しい演奏でした。
1番は2番ほど有名ではないけど、良い曲なんですよ。かっこいい。
そして大好きな2番は久しぶりに生で聴いたけど、やっぱり何度聴いても良い曲!!
3番も好きですが、より好きなのは2番。ベタだけどラフマニノフの2番は大好きです。
特に2楽章。
「こんなにも美しい曲がほかにあるだろうか?」という曲はたくさんありますが、
そんな1曲であり、断トツのひとつだと思います。
いつも、この2楽章を聴くと、あまりの美しさに泣きそうになります。
今回もやはりやられました(笑)。
協奏曲を聴いているときいつもいつも思うのは、オケの響きの中で一緒になって弾いたら、ものすごく楽しいんだろうな、ということ。
この2楽章なんかは特に。
弾きながら感動して泣いちゃいそう。。
ラフマニノフの音楽って、一見ロマンチックで感情的なようで、実はそうじゃないようです。
よくよく聴くと、明るい音楽、というよりかはどちらかというとどこか暗め。
悲哀という言葉が思い浮かびます。
でもそれが魅力なのです。
話が少し逸れましたが、、
アンコールは、なんと、いままさに自分が練習中の1曲で、驚きました。
実はひそかに、「アンコール、弾いてくれるかなぁ。もし弾いてくれるなら何弾くんだろう??(自分が弾いている)あの曲弾いてくれないかな。どんな音色で弾くのか興味あるし」なんて思っていたので。。。全っ然期待してなかったけど。
まさかホントにどんぴしゃだったのでびっくり!こういうこともあるんですね。
この曲はプレトニョフは結構あっさり、淡々としていました。左手はささやくようでしたし。
私は、ロシアの雄大で広大な土地と情景(行ったことないけど)をイメージしていたので、自分とはイメージが違うんだなと思いましたが、歌わせ方なんかは参考になりました。
テンポが楽譜に書かれているよりも速めだったので、余計にあっさり聞こえたのかもしれません。
3番4番を弾く第2夜は、仕事で残念ながら行けないのですが、超難曲!と言われる3番を、約1週間後に弾いちゃうなんて。
というか、協奏曲を1度に4曲も弾くのがやはりすごいですね。
プレトニョフ氏にとっては「訳ないさ♪」という感じなんでしょうね。巨匠。。
ピアノの演奏を聴くとき、動画でも生の演奏会でも、ついつい手元(やペダリング)を見ちゃいますが、個人的にはぜひ、弾いているときの姿勢やからだの使い方にも注目してみることをオススメします。
ピアノは、指だけで弾くものではないんだ。からだ全体を使って弾くんだ、ということがわかります。
上手い人ほど無駄な動きが一切ないです。プレトニョフもそうで、ほとんどからだが動いていなかったなぁ。支えがしっかりあるから、その必要がないのでしょう。
プレトニョフの演奏を聴いて、こんなにも素晴しい音楽を、素晴しい演奏によって私たち聴衆に伝えてくれて、この世に音楽があることに感謝せずにはいられない。
そんなふうに思いました。
現代最高のピアニストの1人であるプレトニョフ。
機会があればぜひ聴きに行ってみてください。
その芸術的な音を聴くと、ピアノという楽器の新たな魅力を教えてくれます。