音楽に寄せて 

街のピアノ講師が日々思っていることを綴ります

繊細、骨太、そして真摯~《牛田智大 ピアノ・リサイタル》

ピアニスト・牛田智大さんのリサイタルを聴いてきました。

 



プログラムはこちら↓



アンコールです↓(5曲も!)

J.S.バッハブゾーニ編曲:コラール前奏曲 “われ汝に呼ばわる”  BWV639
・パデレフスキ:ノクターン  Op. 16-4
・パデレフスキ:6つの演奏会用ユモレスクより 第2番「サラバンド」 Op. 14-2
ショパン24の前奏曲 Op. 28より 第4曲 ホ短調
シューマントロイメライめちゃめちゃ良かったです

 

 

牛田さんのことは彼がデビューした時から知っていましたが、生演奏は今回が初めて。

当時12歳の美少年。最初に写真を見たとき、「うわ~、かわいい子。女の子みたい!(失礼!)」と思いました。実際、この頃の牛田さんは天使のような雰囲気を持っています。

演奏もテレビなどで拝見していました。12歳とは思えない表現力が素晴しいなと思ったのを覚えています。

 

そして、一昨年のショパンコンクール、第1次予選での演奏。

魂のこもった『幻想曲』の演奏が、非常に印象深かったですし、大変素晴しかったです。残念ながら本選には進めなかったのはご周知の通りですが、コンクールでの評価や結果がすべてではない、ということは、彼の演奏、現在の活躍を見ればよくわかりますね。

 

この時の第1次予選での演奏を聴いて、牛田さんの演奏を生で聴いてみたいと思い、ようやく今回実現しました。

 

 

まずひと言。

すっっっごく繊細な音でした。

 

響きがと~~っても柔らかくて、私、こんな繊細な音を聴いたのは初めてです。

ふわ~って、響きが空間に舞い上がっていくんです。

あくまでイメージですが、ほんの0.1ミリグラムの力でも、触れた瞬間に儚く消えてしまいそうなくらい繊細な響き、と私は感じました。

(ピアノで柔らかい響きの音を出すのって技術がいるんですよ。)

 

 

前半のシューベルトは、もう繊細の極み。ほの暗い陰影も明るさやあたたかさも、音で表現してくれて。

シューベルトって音楽的に難しいですが、さすが牛田さん。

ソナタ13番は私もその昔弾きましたが、「こんなに素敵な曲だったのか」と改めて魅力を教えてもらいました。シューベルト、良い。

 

 

しかし一方で、ちゃんと骨太な音も聴かせてくれました。

プログラム最後の曲はブラームスソナタ3番です。

私は今回もまたまた3階席だったのですが、その3階まで、まるで地響きのように低音が鳴り響いていたんです。からだでそれをはっきりと感じました。

「ずーっと聴いていたい!」と思いながら、牛田さんが描くブラームスの世界に浸ることができました。いや~、良かった!!

 

 

雑誌などで牛田さんのインタビュー記事を読むと、彼が非常に、作曲家、作品、音楽、聴衆、自分と関わってくれる人すべてに対して真摯で誠実であろう人柄が伝わってくるのですが、やはり演奏にもそれが表われますね。

 

作曲家への敬意と、作品の一音一音に非常に真摯に誠実に向き合っているのが演奏からわかります。

自分が出している音に対して非常に厳しいところがあるのでは?と感じるほど、一音一音、すべての音に緻密に向き合っています。

恐らく職人のように。

 

ロシアに渡り、奏法を見直し、ピアノという楽器の扱い方を真剣に学んだことも伝わってきました。

 

幼い頃から舞台に立ち続けていることもあり、タフな面もあるのでしょう。

繊細でありながら芯の強さが音から感じられます。

 

 

それから、牛田さんの音でドビュッシーを聴いてみたいなと思いました。

ドビュッシーは空気を含ませた響きが必要なので、牛田さんの音に合っているように感じます。

 

 

いや~、牛田さん、素晴しかったです👏

まだ20代前半。この先も聴き続けたいピアニストさんです。

皆さんも、機会があればぜひ牛田さんの演奏を、音を、直に聴いてみてください。

私はまた聴きに行きます!(笑)