ピアノにおいて、「音色」という観点で見たとき、
離鍵の仕方というのはとても大切なことになってきます。
離鍵の仕方・・・つまり、鍵盤の離し方です。
私は、この離鍵について、つい3年ほど前に教えて頂きました。
それまで、音大時代や留学時代に、ピアノ演奏技術の面で
離鍵の仕方というのを教えてもらったことがありませんでした。
私がたまたまそうだったのかもしれません。
しかし、最初に教わったときは、なぜ音色に重要なのか、なかなか理解できませんでした。
理解できていなかったので、自分で気をつけることができなく、時々注意を受ける。
そんなことがしばらく続いていました。
ようやく、ごく最近になって、私自身の耳が以前よりもまたさらに開いてきたからか、あるとき(シューベルト=リストの「アヴェ・マリア」を練習していたときに)、
先生がおっしゃっていた「離鍵に気をつけることの意味」がわかったのです。
欲しい音色、その音楽に必要な音色をイメージしたとき、
鍵盤の離し方のタイミングがわずかにズレるだけで、音色に影響することに気がついたのです。
そのタイミングが早くても、遅くてもダメで、
その音楽によってさまざまなので、これはその時その時で対処していくしかないのですが、
とにかく、鍵盤の離し方に気をつける。
気をつけるしかない、です。
これは、ピアノを弾く人の、音に対する感受性や感性の鋭さも重要になるかと思います。
もともと鋭い人、理解が早い人は、私のように3年もかからないで
出来るようになるのでしょう。
ピアノを弾く、というとなると、
「どう弾くか」とか、どうしても「弾く」ことに意識がいきがちですが(それも大事です)、私は、鍵盤の離し方までが「ピアノを弾く」ということなのだと
ようやく理解しました。
そして、この「鍵盤の離し方」に気を配ることは、
ピアノにおいて、自分が演奏するひとつひとつの音に対して
最後まで責任を持つことなのだと思います。
離鍵の仕方ひとつで、音色が変わってしまう、なんて
ピアノ演奏の世界はなんて奥深く面白いんだと、
私の中でピアノの世界がまたぐっと広がった気がして、
さらに勉強を深めたいと思いました。